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「冨田勲X初音ミク」の壮大な実験作@オーチャードホール [Report]

「冨田勲X初音ミク」の壮大な実験作@オーチャードホール

冨田勲追悼特別公演(X初音ミク)『ドクター・コッペリウス』
日時:2016年11月12日(土)13:00~16:00
会場:Bunkamuraオーチャードホール
プログラム
第1部:冨田勲(X初音ミク)『イーハトーヴ交響曲』
ゲストアーテティスト、エイドリアン・シャーウッド『惑星:火星~水星~木曜』
第2部:冨田勲(X初音ミク)『ドクター・コッペリウス』
感想
2016年5月に亡くなった冨田勲の遺志を継いだ仲間や弟子たちによる野心的な試み。
日本を代表するアーティストや演出家たちが協力して壮大な作品が作り上げられた。
もちろん、目玉はバーチャル・シンガー・ダンサーの初音ミクの登場で、しかも今回は実際の人間のダンサーたちとの共演が見所とのふれこみだが、はたしてどうだったか。
以下は、観客としての私の個人的な感想。
第1部
「イーハトーヴ交響曲」は、宮沢賢治の代表的な詩に音楽を付けた交響曲で、その面では素晴らしい作品。
問題は、時折背景に初音ミクの映像が出てきて踊る試みが成功しているかどうか。
成功したと思われるのは、、幻想的な詩「剣舞:星めぐりの歌」や「銀河鉄道の夜」などで、初音ミクが夢の世界の中で踊るような不思議な感覚が楽しめたこと。
反面、全体として初音ミクに目が奪われてしまい、せっかくの宮沢賢治の世界の音楽化という重要な面を目立たなくさせてしまった点。
またこの第1部で、初音ミクの魅力を見せてしまったので、第2部の見所がそれだけ減ってしまったのはある意味で逆効果。
映像を組み合わせるとしたら、初音ミクではなく、もっとナイーブな絵本の絵のようなものが、宮沢賢治の世界にはふさわしいように感じられた。
ただ、そこをあえて超えて実験しようとしたのが冨田勲の真骨頂か。
なお、第1部の最後に、ゲストの「ダブ・ミックス」アーティストのエイドリアン・シャーウッドによる「惑星:Planets Live Dub Mix:火星~水星~木星」が大音量で演奏された。
惑星の壮大さを音で示そうとする作品のようであったが、音だけで惑星を表現しようとして、映像などはなかったので、今回の公演の流れからは外れるもので、あまり感心しなかった。
第2部
この第2部の「ドクター・コッペリウス」が今回の主要な出し物で、これは物語と音楽に加えて、実際のダンスの振り付けと映像の初音ミクを同期化するという、まさにここに極まったという実験作。
全体として、とにかく冨田勲の壮大な世界に圧倒される作品であった。
ただし、話題の中心である初音ミクと実際のダンサーのからみが成功しているかどうかは意見の分かれるところであろう。
成功といえるのは、初音ミクとダンサーの踊りが音楽と見事に合っていて、その面では楽しめたものの、成功したとはいえない点は、実物大の人間のダンサーと同期させるために初音ミクの映像スクリーンが第1部よりの下に下げられて見づらくなり、しかもダンサーに当たるライトで映像が見えにくくなって、実際の舞台でのダンサーと映像の融合の難しさが浮彫になったこと。しかも、舞台全体が広いだけに、ダンサーと映像内の動きが舞台下方の真ん中の部分に小さく集まって迫力が失われたことなどいくつか課題が残った。
もっとこじんまりした劇場の方が、スクリーン内外のコラボや同期化が自然に見えるのではないかと思わせた。
しかし後半、ダンサーと初音ミクの掛け合いがなくなってからの展開は、舞台の上下左右、さらに観客席にまではみ出る照明効果も使って、迫力満点の演出はさすが一流のプロ集団の作品。
結論として、物語、音楽、映像、ダンスなどすべてを融合した素晴らしい舞台芸術であった。
(宮尾)
参考
初日(11月11日)公演の記事と写真:
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000361.000012949.html
冨田勲追悼特別公演「ドクター・コッペリウス」
http://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/kashi/20161111.html
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